華麗なるフュージョン野郎。冨田ラボ(Tomita lab)「シップランチング(Shiplaunching)」(M)
1980年前後に、それ以前に大流行したクロス・オーバー、ジャズ・フュージョンといった高度な演奏技術を追求する音楽の反動でもあったのか、サウンドの斬新さを追求するニュー・ウェーヴの荒波が音楽界を直撃。
イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成した細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一をはじめ、スペース・サーカスの岡野ハジメなどそうそうたるミュージシャンが、ニュー・ウェーヴへ転向して行きました。
それに対し、1962年生まれなので世代的にはやや下ですが、フュージョンを偏愛(?)したまま月日を重ね、1997年にキリンジのプロデュースで頭角を現すと、2000年のMISIA「Everything」のアレンジで大ブレイクしたのが、冨田ラボ(Tomita lab)こと冨田恵一。
華麗なるフュージョン野郎、冨田ラボ(Tomita lab)の「フレーズ・フェチ」振りが堪能できるのが、傑作アルバム「シップランチング(Shiplaunching)」(2006年)です。
遊佐未森やRAZZ MA TAZZなどで、キリンジ以前の冨田恵一と数多くの共同作業を手掛けた、私の中学の同級生、外間隆史から最近教えてもらった冨田ラボ(Tomita lab)の「フレーズ・フェチ」振りが面白い。
冨田ラボ(Tomita lab)は、そもそもプログレは聴かなかったらしいのですが、ヴィンセント・ギャロの映画「バッファロー'66」(1998年)でイエス(Yes)を聴き、クリス・スクワイアのリッケンバッカーのピック弾きベースが気に入り、練習し習得し、その成果が左のジャケット写真のファースト・アルバム「シップビルディング(Shipbuilding)」(2003年)収録の「Shipyard(edeition1)」とのこと。
2006年2月にNHKのトップ・ランナーに出演した冨田ラボは、確か若い頃は楽器がうまくなりたくて練習ばかりしていたと言っていましたが、ベース、ギターをはじめ何でも楽器が上手いだけでなく、いろんなプレイヤーの模倣ができるコピー魔振りがまた面白いところです。
例えば、「シップランチング(Shiplaunching)」では、クリス・スクワイア・ベースの「恋は傘の中で愛に」もありますが、ジャコ・パストリアス・ベースの「プラシーボ・セシボン」など、一曲ごとに、プレイヤーの設定が違うところも「フレーズ・フェチ」の面目躍如です。
ただし、冨田ラボ(Tomita lab)の凄いところは、普通の「フレーズ・フェチ」はインストに走ってしまうのですが、YOU TUBEにUPされているNHKのトップ・ランナーの一部でもそのようなことを語っているように、楽器はあくまでも歌に寄り添わなければならないという歌重視の姿勢が基本にあることです。「シップビルディング(Shipbuilding)」も、「シップランチング(Shiplaunching)」もインスト曲はイントロダクションの小曲等わずかにすぎません。
とにかく、手が込んだ冨田ラボ(Tomita lab)作品について語りだしたらきりがありませんので、「フレーズ・フェチ」振りと並ぶもうひとつの魅力、作詞家、歌い手の人選の妙については、「シップランチング(Shiplaunching)」に関する川勝正幸氏の素晴らしい解説がありますので筆を譲らせていただきます。
前回の記事で指摘させていただいた岡野ハジメと相通ずる「フレーズ・フェチ」振り、岡野ハジメが「刺激」の追求なら、華麗なるフュージョン野郎、冨田ラボ(Tomita lab)は「洗練」の追求といってよいのではないでしょうか?
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