企業価値評価(バリュエーション)の隠れた名テキスト。藤原総一郎(監修)、森・浜田松本法律事務所 (編集)、 ㈱KPMG FAS (編集)「倒産法全書 (下) 」
今年の1月に発売された大著、藤原総一郎(監修)、森・浜田松本法律事務所 (編集)、 ㈱KPMG FAS (編集)「倒産法全書 (上) 」及び「倒産法全書 (下) 」。
企業価値評価(バリュエーション)、株式評価、M&Aではなく、倒産法の本なので、見逃す方も多いのではないかと思われますので、ぜひ私がご紹介しておきたいのが、㈱KPMG FASの岡田光米国公認会計士の筆による「倒産法全書 (下) 」の第5章2節「企業(事業)評価」の部分。
巷の企業価値評価(バリュエーション)、株式評価本がなかなか触れにくかった部分に一歩踏み込んだ意欲的な内容だと思います。
企業価値評価(バリュエーション)、株式評価のテキストとしては、まずは、公的指針・指標である、経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」(平成19年5月16日日本公認会計士協会経営研究調査会)が挙げられます。
左の写真は、清文社から市販されているものですが、日本公認会計士協会のサイトから無償でダウンロードできます。
そして、グローバル・スタンダードともいうべきバイブル、マッキンゼー・アンド・カンパニー他(著)、本田桂子他(訳) 「企業価値評価 第4版」。
大著なのではありますが、いつ引っぱり出しても、過不足のない内容はさすが。
日本の実務家の著作では、監査法人トーマツ(著)、 枡谷克悦公認会計士 (著)「企業価値評価の実務」が充実の内容。
計算例が充実していて、株主価値ベースのキャッシュフローを用いたDCF法(エクイティ・アプローチ)と、事業価値ベースのキャッシュフローを用いたDCF法(エンティティ・アプローチ)の、計算結果の一致を確かめるような、他書にない計算例があったりして面白い。
岡田光米国公認会計士の「企業(事業)評価」部分が、素晴らしいと思うのは以下のような部分です。
■非上場会社への加重平均資本コスト(WACC)の適用における資本構成の考え方
加重平均資本コスト(WACC)の算出においては、理論的には時価ベースの資本構成比率を採用する必要があるとされています。
上場会社は株式の市場価格を利用すればよいのですが、非上場会社は株式の市場価格が一般には不明です。そこで、岡田光米国公認会計士は、仮の資本構成を初期設定値として上で、加重平均資本コスト(WACC)の算定に用いる資本構成と、評価の結果得られる資本構成が一致するまで、「循環法」と呼ぶ収束計算する必要があるとし、比較的詳細に記述しております。
このことは、マッキンゼー「企業価値評価 第4版」や枡谷克悦公認会計士 「企業価値評価の実務」でも触れられているのですが、他書では触れられていないことが多く、実務上で目にする、評価書や信用調査会社の簡易的なDCF法評価サービスなどではあまり見かけません。
ケース・バイ・ケースではありますが、負債が多く収益力が高い非上場会社などの場合、「循環法」を用いないと加重平均資本コスト(WACC)が低くなりすぎ、結果として評価額が高くなりすぎるおそれがあると、実務上感じておりましたので、「循環法」の提唱については、我が意を得たりという感じがいたします。
■マーケット・プレミアム、小規模リスクプレミアム、非流動性割引(非流動性ディカウント)等の数値目安の明示
これらの数値については、通常は、統計自体の難易度が高いとともに、期間・対象をどうするかについても定まった見解がなく、具体的な目安が示されない場合が多いのですが、KPMG推計の国別マーケット・プレミアム、評価実務における小規模リスクプレミアム2%~4%程度、米国における流動性割引(非流動性ディカウント)おおむね25%~40%程度の数値目安が明示されています。
このあたりは、実務上苦慮するところですので、数値目安の明示があると助かります。ただし、どの数値目安も算出方法(計測期間、対象等)が明確でないところは残念ではあり、この数字をそのまま使うことはなかなか難しそうではありますが。
「倒産法全書 (下) 」の第5章2節「企業(事業)評価」の部分ですが、企業価値評価(バリュエーション)、株式評価、特に非上場会社に関してのものに関与される方は、ぜひ目を通しておくとよろしいのではないでしょうか?
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