平成20年(2008年)税制改正でこうなるNo.9。上場株式等の譲渡所得課税の改正(所得税)
今回は、上場株式等の譲渡所得課税の改正です。
上場株式等の譲渡益や配当の軽減税率の適用期限が平成20年12月31日であり、高額の譲渡益や配当については優遇措置を継続すべきでないとの意見、預貯金や株式、債券、投資信託、保険などの金融取引関連の所得を一くくりにして課税する金融所得の一体課税を導入すべきとの意見を考慮し、
・平成20年末をもって上場株式等の譲渡所得等の軽減税率10%(所得税7%、住民税3%)が廃止され、
・平成21年から20%(所得税15%、住民税5%)とされますが
・円滑に新制度へ移行するための特例措置として、平成21年、22年の2年間、譲渡所得500万円以下の部分は10%のままとされる
改正が行われました。
■時系列で見る上場株式等の譲渡所得等の税率の推移(エンジェル税制を除く)
・平成19年1月1日~12月31日
軽減税率10%(所得税7%、住民税3%)の申告分離課税。
平成13年11月30日から平成14年12月31日までに証券会社を通して取得した上場株式等を、平成19年12月31日までに売却した場合は、その売却した上場株式等の購入代価の額が1,000万円までのものの売却益は非課税とする特例有。
・平成20年1月1日~12月31日
軽減税率10%(所得税7%、住民税3%)の申告分離課税。
一定の購入代価の額が1,000万円までのものの売却益は非課税とする特例は無。
・平成21年1月1日~平成22年12月31日
譲渡所得500万円以下の部分は軽減税率10%(所得税7%、住民税3%)
譲渡所得500万円超の部分は税率20%(所得税15%、住民税5%)
の申告分離課税。
・平成23年1月1日~
税率20%(所得税15%、住民税5%)の申告分離課税。
■源泉徴収口座における源泉徴収税率の特例
上記の改正に伴い、平成21年1月1日~平成22年12月31日の間の源泉徴収口座における源泉徴収税率(特別徴収税率)は、10%(所得税7%、住民税3%)とされます。
ただし、源泉徴収口座の上場株式等に係る譲渡所得等の金額と源泉徴収口座以外の上場株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額が500万円を超える者については、その超える年分について、源泉徴収口座の譲渡所得等に係る申告不要の特例は適用されません。
すなわち、従来は、特定口座(源泉徴収あり)を利用している人は、金額に関係なく申告不要制度が適用されていますが、税率が2段階となるので、上場株式等の譲渡所得が500万円を超える人は申告する必要がありますのでご注意ください。
■上場株式等の譲渡所得課税の改正から感じること
現行の金融商品の課税制度は、私どもプロの目から見ても大変複雑で、確定申告の時期には大変神経を使うところでもあります。金融商品の課税制度の複雑さ自体が預金から投資への流れを阻害していた面は否定できず、金融所得の一体課税へ大きく踏み出す今回の改正は好ましいことだと思われます。
また、税率が、10%(所得税7%、住民税3%)から税率20%(所得税15%、住民税5%)に改正されることは、上場株式等の多額の含み益を有している方にとっては大変大きな影響があり、平成20年度中の売却を検討する必要があるかと思われますのでご注意ください。
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