どうなる異例の事態No.5。不動産証券化と期限切れとなった租税特別措置。
開業以来、基本的に与党=自民党の税制改正大綱のとおり行われるのが当たり前だと思ってきた税制改正ですが、当ブログでも続けてご紹介しているとおり、つなぎ法案で一部が5月31日まで延長されたものの、延長が予定されていたにもかかわらずいったん期限切れとなったものが生じた租税特別措置。
今回は、不動産証券化に与える影響について考えてみます。
■つなぎ法案で3月31日の期限切れが5月31日まで延長された不動産証券化に関係する主な租税特別措置
・土地の売買による所有権移転登記、土地の所有権の信託登記の登録免許税の軽減措置(租税特別措置法第72条)
土地の売買による所有権移転登記
本則の固定資産税評価額×2%(登録免許税法第9条)を、固定資産税×1%に軽減
土地の所有権の信託登記
本則の固定資産税評価額×0.4%(登録免許税法第9条)を、固定資産税×0.2%に軽減
・特定目的会社に係る所有権移転に対する登録免許税の軽減措置(租税特別措置法第83条の3)
土地
本則の固定資産税評価額×1%(租税特別措置法第72条)を、固定資産税×0.8%に軽減
建物
本則の固定資産税評価額×2%(登録免許税法第9条)を、固定資産税×0.8%に軽減
■延長が予定されていたがいったん期限切れとなった不動産証券化に関係する主な租税特別措置
・新築住宅特例適用住宅用地に係る減額措置について、土地取得後の住宅新築までの経過年数要件を緩和する不動産取得税の特例(新附則第10条の2第2項)
土地を取得した日から「2年以内」に当該土地の上に一定の要件を満たす特例適用住宅が新築された場合に一定の金額減額されるが、「2年以内」が「3年以内(土地の取得から3年以内に特例適用住宅が新築されることが困難である一定の場合は4年)」に緩和
・新築住宅を宅地建物取引業者等が取得したものとみなす日を住宅新築の日から1年を経過した日に緩和する不動産取得税の特例(新附則第10条の2第1項)
宅地建物取引業者等が請負契約に基づいて家屋を新築した場合で、「6ヶ月以内」に最初の「使用」又は「譲渡があった場合には、家屋を建築の請負によって完成させた建設会社ではなく、「使用」の場合にはその時点の所有者が、「譲渡」の場合にはその時点の譲受人が納税義務者となるが、「6ヶ月以内」が「1年以内」に要件緩和。
・新築住宅に係る固定資産税の減額措置(新附則第15条の6)
新築された住宅が、一定の床面積要件をみたす場合は、新たに課税される年度から3年度分(3階建以上の耐火・準耐火建築物は5年度分)に限り、120m2までの居住部分に相当する固定資産税額(家屋分)の1/2が軽減。
■上記からわかること
国税については、登録免許税の措置特別措置による特例は、期限切れにより直ちに支障が生じるものとして、つなぎ法案により5月31日まで暫定的に延長されたようです。
逆に、地方税については、つなぎ法案は自動車取得税のみ延長させ、不動産取得税や固定資産税は、期限切れにより直ちに支障が生じるものはないとの判断が行われたようです。
不動産取得税は、不動産取得者の申告を受けて納税通知書を納税者に送付し課税するため、法案成立が多少遅れる程度なら、法案成立前に通知書を送らなければよいということのようです。
固定資産税も、納税通知書を納税者に送付し課税するため、法案成立が多少遅れる程度なら、法案成立前に通知書を送らなければよいということのようです。
したがって、期限切れとなった租税特別措置が、不動産証券化に与える影響はとりあえずは、なさそうと見てよろしいのではないでしょうか?
| 固定リンク
« ロバート・パーマー(Robert Palmer)が紹介してくれた音楽No.3。ネヴィル・ブラザーズ「ファイヨー・オン・ザ・バイユー(Fiyo on the Bayou)」(M) | トップページ | ロバート・パ-マー(Robert Palmer)を大いに讃えるNo.5。 「ダブル・ファン(DOUBLE FAN)」(M) »
「不動産証券化・資産流動化等(ややプロ向)」カテゴリの記事
- 日本公認会計士協会の研修を受講。会長通牒平成23年第3号「循環取引等不適切な会計処理への監査上の対応等について」の解説。(2011.10.24)
- これも「技あり」の民事再生法の活用でしょうか?ビ・ライフ投資法人とJ-REITのニューシティ・レジデンス投資法人の適格合併による青色繰越欠損金の引き継ぎ。「内部留保できるリート・・・民事再生で生まれた繰越欠損金」(「2010年11月1日 第807号 バードレポート」より)(2010.10.30)
- 不動産証券化への影響にもご注意。消費税、導管性要件、登録免許税についての改正。平成22年税制改正大綱(2010年税税制改正大綱)。(2009.12.26)
- 小規模宅地等の課税の特例の見直し、マンションやアパートの自販機節税対策、特定目的会社にかかる課税の特例の要件の見直し。政府税制調査会で配布された「要望にない項目」。(2009.11.30)
- 専門家でも理解が難しく落とし穴にはまる不思議な税金、消費税の謎に迫るユニークな書。熊王征秀(著)「クマオーの消費税トラブル・バスター」(2009.10.12)
コメント