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どうなる異例の事態No.4。期限切れとなった租税特別措置の遡及適用

H200406  当ブログでも続けてご紹介している、つなぎ法案に盛り込まれず、いったん期限切れとなった交際費課税の特例や試験研究費の税額控除等の租税特別措置。今回は、法案が成立した場合の遡及適用について考えてみます。

 減税項目、すなわち納税者にとって期限が切れると損な租税特別措置は、遡及適用されるのではないかという期待が強いようですがどうなるのでしょうか?

 また、増税項目、すなわち納税者にとって期限が切れると得な租税特別措置は、遡及適用されるのでしょうか?

■租税法の遡及立法の可否

 本年も改訂版が発売されたばかりの、金子宏東京大学名誉教授「租税法(第十三版)」によると、次のとおりであり、通説と解してよいかと思われます。

 過去の事実や取引から生じる納税義務の内容を、納税者の利益に変更する遡及立法は許される、と解してよい。しかし、それを納税義務者の不利益に変更する遡及立法は、原則として許されないと解するべきであろう。人々は、現在妥当している租税法規に依拠しつつ-すなわち、現在の法規に従って課税が行われることを信頼しつつ-各種の取引を行うのであるから、後になってその信頼を裏切ることは、租税法律主義の狙いである予測可能性や法的安定性を阻害することになる。憲法は、この点について明文の定めをおいていないが、憲法84条は納税者の信頼を裏切るような遡及立法を禁止する趣旨を含んでいると、解すべきである(引用者注:判例等省略)。なお、所得税や法人税のような期間税について、年度の途中で納税者に不利益な改正がなされ、年度の始めにさかのぼって適用されることがあるが、それが許されるかどうかは、そのような改正がなされることが、年度開始前に、一般的にしかも十分に予測できたどうかによると解すべきであろう(引用者注:判例等省略)」

 すなわち、租税法の遡及立法は、納税者の利益に変更するものは許されるが、納税者の不利益に変更するものは原則として許されないというのが通説と思われます。

税務研究会の週刊税務通信の最新号(平成20年4月7日号)

 関連記事が掲載されていますので、以下、同記事を参考に検討いたします。

■期限切れとなった租税特別措置の行方

 平成20年度税制改正法案と呼ばれる「所得税法等の一部を改正する法律案」は、2月29日に衆議員で可決し、参議院に送付されているため、憲法59条で規定されている60日条項により衆議院の再可決が4月29日には可能となります。

 現在の国会での審議の動向がはっきりしないのですが、仮に、法案の修正が行われず、4月29日に再議決され、平成20年度税制改正法案が公布、施行された場合、法律は4月1日に遡及して適用されることになります。

■減税項目、すなわち納税者にとって期限が切れると損な租税特別措置は、遡及適用されるか?

 上記のとおりの展開になるならば、遡及して適用される可能性が高いと思われます。前回の記事でご紹介したように、額賀財務大臣も4月1日の閣議後記者会見で、減税項目の遡及適用の可能性について示唆しています。

■増税項目、すなわち納税者にとって期限が切れると得な租税特別措置は、遡及適用されるか?

 週刊税務通信の記事は、憲法84条の解釈である不利益不遡及の原則から、4月1日に遡及適用が行われなず、適用関係を明らかにするための何らかの手当てがされることも考えられるとしています。

 しかし、例えば、交際費の損金不算入(租税特別措置法61の4)については、対象となるのは「各事業年度において支出する交際費等の額」とされており、実際の申告は事業年度終了時の法令の規定に基づいて行うことになり、平成20年4月1日に開始する事業年度の申告は、平成21年3月31日における法律が適用されることになるので、不利益不遡及の取り扱いがなされる可能性ついて微妙な言い回しとなっております。

■所得税や法人税のような期間税の場合の遡及適用の基準時点、改正の周知と予測可能性

 増税項目、すなわち納税者にとって期限が切れると得な租税特別措置は、遡及適用されるかについては、所得税や法人税のような期間税の場合は、納税義務の成立時点で遡及適用になるか?、課税期間の開始前に改正の周知と予測可能性が十分であったか?、が論点となってくるようです。

 そう、この論点は、以前にこのブログでもご紹介した平成16年度の土地建物等の譲渡損失の他の所得との損益通算及び繰越控除制度を原則廃止が納税者に不利益な遡及適用かという裁判でも問題となっていた論点です。

 今後の展開がますます見逃せなくなってきました。

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