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株安で初の運用損。勤労者退職金共済機構って何?

 昨日の日本経済新聞の1面に、中小企業の政府管掌健康保険(政管健保)が2007年度決算で「1800億円程度の赤字に転落」という記事が出ており、注目された中小企業関係者の方は多いかと思われます。

 さらにめくると、確か3面に「勤労者退職金共済機構 株安で初の運用損」という記事が小さく掲載されていたのには気がつかれましたでしょうか?日本経済新聞には詳しい説明がありませんでしたが、勤労者退職金共済機構という聞きなれない団体は何でしょうか?

■勤労者退職金共済機構、株安で初の運用損(2008年3月12日日本経済新聞より引用)

 厚生労働省は11日に開いた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会で、同省所管の独立行政法人の勤労者退職金共済機構が2007年度に1104億円の運用損を出すとの見通しを示した。同機構は中小企業から社員向けの退職金を受け取り、これを積み立てて運用している。株価が大幅に下落したことなどが影響し、1959年の制度創設以来初めて運用損が発生した。

 同法人は債券や株式などで積立金を運用している。07年度の運用成績は今年1月末時点でマイナス2.13%で、06年度通期の2.81%に比べて大きく落ち込んでいる。

■勤労者退職金共済機とは? 

 簡単に言うならば、中小企業退職金共済(「中退共」) の運営主体です。

 独立行政法人勤労者退職金共済機構とは、中退共、建設業退職金共済(建退共)、清酒製造業退職金共済(清退共)、林業退職金共済(「林退共」)の運営主体です。中退共は、かつては中小企業退職金共済事業団という特殊法人で運営していましたが、他の共済と統合し、平成15年より独立行政法人勤労者退職金共済機構に移管されています。

 中でも中退共は、中小企業の退職金制度の定版でもあり、加入されている企業も多いことかと思われます。

■中退共の基本ポート・フォリオ

 勤労者退職金共済機構のホームページによると、基本ポートフォリオ(平成17年10月1日改定)は以下のとおりです。
 期待収益率 2.60% 、標準偏差 2.93%
         国内債券  国内株式  外国債券  外国株式   合 計
 資 産 配 分   79.0%     10.0%      5.0%     6.0%     100.0%
 乖離許容幅   ±7.0%    ±4.0%     ±2.0%   ±2.0%
 (注)国内債券には財政融資資金預託金、生命保険資産(一般勘定)、長期貸付金、預け金、不動産を含む。

■この記事からわかること:中小企業経営者の立場から

 中退共は確定拠出型の退職金制度です。

 毎月の掛け金を約束する確定拠出型の退職金制度である中退共は、大企業の企業年金制度に多くみられる将来の退職金を約束する確定給付型の退職金制度と異なり、就業規則等で退職金は中退共による積立額とする旨とり決めておけば運用利回りが低下しても積立不足額は発生しません。

 また、一定期間一定額を国が掛け金を助成してくれたり、運営主体が独立行政法人になったとはいえ、中小企業退職金共済法という国の法律による制度であり、事実上「暗黙の政府保証」があるとも解釈できます。

 したがって、個人向け国債小規模企業共済と同様に売り手の経済合理性とかけ離れた、買い手にとって明らかに有利な公的商品であると思われます。

 ただし、以下のような加入条件がありますのでご注意ください(小規模企業共済と比べるとこちらはほとんどの中小企業が条件を満たせるかとも思われますが)。

業種常用従業員数資本金・出資金
一般業種(製造業、建設業等) 300人以下 または 3億円以下
卸売業 100人以下 または 1億円以下
サービス業 100人以下 または 5千万円以下
小売業 50人以下 または 5千万円以下

■この記事からわかること:中小企業従業員の立場から

 北村慶氏の「大人の投資入門」 PHP研究所 (2008年1月) でも触れられていますが、個人の資産運用を考える場合に、公的制度による資産運用と合わせて運用資産の構成割合(アセット・アロケーション)を考える必要があるかと思われます。

 中退共のアセット・アロケーションは、国内債券79.0%でわかるように、この株安の局面でも▲2.13%程度で済み、「1959年の制度創設以来初めて運用損が発生した」と記事になるくらいにロー・リスクといえるでしょう。

 そうすると、中退共加入者が個人で資産運用する場合は、以前にご紹介したセゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」などの株式投資信託による「世界市場ポートフォリオ」による運用などを検討するのもよいかと思われます。

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