意外と知らない公的制度。「高額療養費制度」とは?
少し前ですが、3月3日の日本経済新聞1面と3面の連載「日本人とおカネ」で、勝間和代公認会計士の談話などを中心に、日本人は保険のコストやリスクについて人任せにしていてよく理解していないという記事が出ていました。
その中で、気になったのは、自己負担3割といわれる健康保険で、実は医療費が高額になる場合は、家計の負担を軽減できるように一定額を超えた部分は1%の負担ですむという「高額療養費制度」。
特に、「この制度はあまり知られておらず、かなりの申請漏れがあるとみられている。一部の保険では対象となる患者への通知を始めたが、多くの場合は連絡がない。」という部分です。
■高額療養費制度とは?(日本経済新聞3月3日より引用)
高額療養制度は入院や長期療養などで医療費の自己負担が1ヶ月に一定額を超えると、超過分が返還される公的制度のことだ。
限度額は年齢や収入により変わる。たとえば70歳未満で所得が一般的(月収が53万円未満で市町村民税を払っている)世帯の場合、月の同一医療機関への支払いが80,100円+αを超えると、超過額が払い戻される。αは総医療費から267,000円を引いた額の1%になる。
総医療費が1,000,000円かかり、病院窓口で3割の自己負担額(300,000円)を支払った場合でも、制度を活用すれば、支払額は実質87,430円で済む計算だ。(引用者注:80,100円+(医療費1,000,000円-267,000)×1%=87,430円)
なお、差額ベット代や保険で認められていない先進医療などの費用は全額自己負担となり、払い戻しの対象とはならない。
この制度はあまり知られておらず、かなりの申請漏れがあるとみられている。一部の保険では対象となる患者への通知を始めたが、多くの場合は連絡がない。
利用するには原則として加入する公的医療保険での手続きが必要。通院の場合は2年以内に手続きをする。
入院で治療した場合は所得区分の認定を受け、病院窓口で認定証を提示すれば自己負担限度額だけで済む。ただ70歳以上の人が入院した場合は、特別な手続きなしに窓口での限度額以上の支払いが不要になるケースが大半だ。
詳しくは、社会保険庁のホーム・ページで確認できます(複雑ですが)。
■この記事からわかることNo.1:公的制度には知られていないものが多くあり自分で自分を守らざるを得ないこと
以前にご紹介した個人向け国債、小規模企業共済、中小企業退職金共済などもそうですが、公的制度には十分に知られていないものが多くありあります。
高額療養費制度について、事前に知り得なかったことにより必要以上に民間の医療保険に加入してしまったというのなら、情報収集努力が足りなかったのだから止むを得ないという論理も成り立つかもしれません。
しかし、健康保険は全員加入が法的に義務付けられており、事後にその給付に、知っている人だけ受けられるというものがあるのはやはり問題があると言わざるを得ません。
ところが、大企業等の組合健保では高額療養費制度について通常は助言がなされるところが多いようであり、中小企業が加入する政府管掌健保でも2006年4月から該当者に申請案内を順次郵送する対策を講じているようですが、自営業者らの国民健康保険の場合などは通知するかどうかは各市町村に任されているというのが現状のようです。
したがって、申請しなければ還付が受けられない高額療養費制度がまさにそうですが、公的制度については自らが積極的に情報収集し、自分で自分を守らざるを得ないのが現実かと思われます。
■この記事からわかることNo.2:実際に高額療養費制度の申請漏れがないかの検証
ちょうど、所得税の確定申告期限が過ぎたばかりで医療費控除で還付を請求された方も多いかも知れませんが、医療費控除が多額だった方は高額療養費制度の申請漏れがないか検証されてはいかがでしょうか?
日経の記事では触れられていませんが、同一世帯で一暦月に21,000円以上の自己負担が2件以上発生した場合にこれらを合算し、その合算した金額がその世帯の自己負担限度額を超えると、その超えた部分の金額が還付されるという「世帯合算」や、過去1年以内の高額療養費の該当回数が4ヶ月以上になると、4ヶ月目からは1ヶ月あたりの自己負担額を下げる(一般の場合、44,400円)という「多数該当」という制度もありますので注意が必要です。
高額療養費制度の申請は、医療費の支払終了後2年を経過すると時効となりますのでご注意ください。
■この記事からわかることNo.3:公的制度を理解した上での民間の医療保険の必要性の検討
しばしば指摘されるように日本の健康保険制度は世界的にみても非常に手厚い制度であり、医療費が高額になったとしても、高額療養費制度により、その自己負担金額がかなり少なくなる仕組みになっています。
ただし、差額ベット代や保険で認められていない先進医療などの費用は高額療養費制度の対象とならず全額自己負担となります。
公的制度である、上記の高額療養費制度も含めた健康保険をよく理解した上で、民間の医療保険の必要性の検討をするのが望ましいかと思われます。
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