中小企業経営にもぴったりの「会計発生高」。勝間和代「決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール」
前回の「効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法」の記事で、そのハイパーな仕事術に圧倒された公認会計士界の新星、勝間和代公認会計士。
この人のすごいところは、本業の会計の本がまたすごく面白いところです。
財務分析のプロ中のプロ、dancing-ufoさんのブログでは、昨年10月の発売時にいち早く紹介されている、勝間和代「決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール」。
「ダメ株を見破る投資のルール」というサブタイトルがついていますが、「オレは株はやらない」という中小企業の経営者の方に、自社の決算書を読むために、ぜひ読んでいただきたい本です。
勝間和代公認会計士は、企業の利益には「金額」の違いだけでなく「質」の違いがあるということ」の大切さを読者と共有したいと思い、「決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール」を執筆したと語ります。
そして、利益の質を測る方法として次の2のポイントを紹介しています。
1.会計発生高が大きいほど利益の質に問題がある
会計発生高=会計利益-現金利益
=(当期純利益+特別損失-特別利益)-営業キャッシュフロー
ウソ偽りなく成長していれば利益とともにキャッシュも伸びるので、会計発生高が大きい場合は注意が必要。
2.総資産経常利益率(ROA)が継続して下がっていたら要注意
総資産経常利益率(ROA)=経常利益/総資産
利益の絶対額が上がっているのにROAが継続して下がっているような会社は利益の質に注意が必要。
ここで特に注目したいのが「会計発生高」で、中小企業の経営者の方なら、「勘定あって銭足らず」という言葉で利益とともにキャッシュも伸びるのが重要なことは良く承知しているはずで、何をいまさらと思われれるかもしれません。
ところが、この「会計発生高」という指標は、実証会計学の世界では使われていたようですが、一般の会計の本や財務分析の本ではなぜかほとんどといっていいぐらい触れられておらず、「銭の足らない勘定」の大きさを測る指標として中小企業の経営者の方に大いに活用していただきたい指標です。
中小企業の経営者の方が使う場合は、
会計発生高=PL上の経常利益から法人税等を引いた金額-CF計算書上の営業キャッシュフロー
として利用するのが簡単でしょう。
また、勝間和代公認会計士は、会計発生高と類似の利益の質を測る方法として、営業キャッシュ・フローが営業利益の60~120%に収まっているかというポイントも紹介しています。設備投資をあまり行わないサービス業や卸業のような減価償却費が小さい業態なら営業キャッシュフローは営業利益の60%ぐらい、大規模な設備投資を行う製造業のような減価償却費が大きな会社なら120%ぐらいになることがその論拠です。
営業キャッシュ・フローが営業利益の60~120%に収まっているかというポイントも、中小企業の経営管理に容易に利用できそうです。
勝間和代「決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール」は、書籍店に数多く並ぶ決算書の読み方の本の中でも、抜群の面白さと読みやすさがあると思いますので、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか?
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