窪田晴男のコード・ワークを楽しむ。パール兄弟「パールトロン(PEAL TRON)」
紙ジャケット、デジタルリマスタリングで再発された、サエキけんぞう(佐伯健三)と窪田晴男を中心としたパール兄弟のポリドール時代のオリジナルアルバム7枚。
前回の1枚目「未来はパール」(1986年)に引き続き、今回は2枚目「パールトロン(PEAL TRON)」(1987年)についてです。
1枚目「未来はパール」は、窪田晴男が一部共作はあるものの全曲の作・編曲を行っていいました。
2枚目「パールトロン(PEAL TRON)」では、ベースのバカボン鈴木やドラムの松永俊弥が作曲を行った曲もあり、一見すると窪田晴男色が薄れたかと思えますが、実は全曲の編曲を行っている窪田晴男色がより強く表れたアルバムだと思います。
「未来はパール」の記事で、窪田晴男のギターの魅力について、ドクター・フィールグッドのウィルコ・ジョンソンばりの切れ味鋭いカッティングを指摘しましたが、ジャズ・フュージョンを通過したテンションを多用した独特のコード・ワークも大きな魅力で、「パールトロン(PEAL TRON)」では十分に堪能できます。
ジャズ・フュージョンを通過したロック・ギタリストとしては、TOTOのスティーヴ・ルカサーのようなタイプが有名ですが、窪田晴男はもっとクールかつソリッドで唯一無二の存在感があります。
また、当時、坂本龍一が窪田晴男を「日本のエディ・マルチネス」と称し、メディア・バーン・ツアーなどで重用していたのも思い出されます。エディ・マルチネスは、ロバート・パーマーとの仕事でのハードなギターで有名ですが、「パールトロン(PEAL TRON)」の窪田晴男の独特のコード・ワークによる強力な磁場は、「日本のエディ・マルチネス」で片付けられない強烈な個性を感じます。
パール兄弟は、この作品の後、3枚目の「ブルー・キングダム」(1988年)、4枚目の「TOYVOX」(1989年)、5枚目の「六本木島」(1990年)と毎年アルバムを発表して行きますが、初期のライヴ・バンド色はどんどん薄れて行き、1990年には窪田晴男が脱退し、サエキけんぞうのユニットのようになって行きました。
窪田晴男は、若い時からすごいすごいと言われてきたわりに、いまだにこれだという代表作がないような印象があります。しかし、当時はこちら側の要求水準が高かったためもっとできるはずという失望感がありましたが、今聞き直してみると「未来はパール」と「パールトロン(PEAL TRON)」は十分に窪田晴男の代表作という出来ではないでしょうか?
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コメント
窪田晴男という人はものすごく上手いギタリストであることは明らかですが、プレイスタイルや作風にわかりやすい特徴や得意技がないので、どうもイメージがつかみにくいところがありますね。
代表作というなら、私もパール兄弟をあげることに賛同いたします。ギタープレイに限っていえば、ゲスト参加した作品で見せる美技、のような職人的スタンスこそが窪田晴男らしいのではないか。とも思えますが、ほぼ全作編曲をこなし、サウンド面でもギタートリオを牽引した初期パール兄弟は、結果的にもっともフルスロットルな作品だったことは間違いありません。
赤城忠治(ex.フィルムス)と組んだアルバム「Flying new asian」というのもありましたが、すごいすごいといわれ続けた男が満を持して放ったソロ作品としては……。やはりこちらの期待が大きすぎたのでしょうか。
投稿: MYB | 2008年3月11日 (火) 03時45分