祝、グラミー賞、冴える「アート・スクール・ヒップホップ」センス。カニエ・ウェスト「グラデュエーション」
1976年デビューのイギリスのロック・バンドであるデフ・スクールは、メンバーがリヴァプールのアート・カレッジ出身だったこともあり、その音楽についてアート・ロックをもじって「アート・スクール・ロック」と呼ばれましたが、スタイリッシュな独特のポップ・センスが特徴でした。
シカゴの美大を音楽が忙しくなり中退したカニエ・ウェストは、くまのぬいぐるみを着たり、基本的にストリート・カルチャーであるヒップ・ホップと相反するような、「アート・スクール・ロック」ならぬ「アート・スクール・ヒップホップ」と呼びたくなる独特のポップ・センスを持っています。
「グラデュエーション」では、「ストロンガー」でのダフト・パンクのサンプリングが話題になりましたが、私的には「チャンピオン」でのスティーリー・ダンの大傑作「幻想の摩天楼」の名曲「滅びゆく英雄(キッド・シャールメイン)」の絶妙なサンプリングがたまらなく魅力的です。
「滅びゆく英雄(キッド・シャールメイン)」はラリー・カールトーンのギターの名演があまりにも有名ですが、「Did you realize that you were a champion in their eyes」というドナルド・フェイゲンの歌の部分をサンプリングしてきています。初め聴いた時は、どこかで聴いたことがある気がしたもののクレジットを見るまで何だったか思い出せませんでしたが、確かにこの部分すごくいいメロディーです。
高橋芳明氏のライナー・ノーツによると、カニエ・ウェストは「ヒップ・ホップ以外のシーンにもリスペクトされるような曲を作りたかった」、「グラミーではいろんな賞を獲ってきたけど、いつもヒップホップとかラップのカテゴリーなんだ。俺は<Song Of the year>や<Album of the year>が欲しいんだよ」とコメントしていたそうです。
スティーリー・ダンやエルトン・ジョン等をサンプリング・ネタにしているのもそういった意図なのかもしれませんが、ここまで鮮やかだと何もいうことはありません(残念ながら、<Song Of the year>はエイミー・ワインハウス「リハブ」に、<Album of the year>はハービー・ハンコック「リヴァー~ジョニ・ミッチェルへのオマージュ」に譲りましたが)。
また、村上隆氏のジャケットですが、見れば見るほど細かいところまでよく描かれており、さすがに世界を席巻する村上隆氏だけあり、惚れ惚れする出来です。
2003年、ニューヨークのサザビーズのオークションで等身大フィギュア「Miss Ko2」が、当時の日本現代美術作品の最高額50万ドル(約5,800万円)で落札され話題となりましたが、わずか2,000円程度で村上隆作品が手に入れられる「グラデュエーション」、それだけでも十分に買う価値があると思いませんか?
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