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蘇る衝撃の税制改正No.2。平成20年2月14日東京地裁判決「東京地裁、税法の遡及適用『合憲』…福岡判決と逆判断」

 平成16年度の税制改正で、所有期間5年超の長期所有土地建物等の譲渡所得に係る税率を26%(所得税20%、住民税6%)から20%(15%、5%)へと引き下げる代わりに、土地建物等の譲渡損失の他の所得との損益通算及び繰越控除制度を原則廃止するとの改正が行われました。

 この改正が衝撃だったのは、改正法の施行は4月1日からにもかかわらず、1月1日の土地建物等の譲渡から、譲渡損失の他の所得との損益通算及び繰越控除制度が原則廃止とされた点です。

 平成20年1月31日の当ブログで、税法の遡及適用は違憲であり平成16年3月の不動産の譲渡損の損益通算を認めるとした平成20年1月29日福岡地裁判決をご紹介しましたが、約半月後の2月14日に今度は東京地裁で全く逆の判決が出ました。

■平成20年2月14日東京地裁判決の概要(平成20年2月15日読売新聞より引用)

 改正租税特別措置法が施行前にさかのぼって適用(遡及適用)されたため、土地・建物の売却損が所得控除されなかったのは違憲だとして、神戸市

の女性らが国を相手取り、控除を認めなかった税務署の処分取り消しを求めた訴訟の判決が14日、東京地裁であった。

Click here to find out more! 大門匡裁判長は「今回の遡及適用には合理的な必要性があった」と述べ、国の措置を合憲と判断、原告側の請求を棄却した。

 同種訴訟で福岡地裁は今年1月、違憲判決を言い渡しており、司法判断が分かれた。原告側は控訴する方針。

 判決によると、原告は2004年2月に大阪府内の土地・建物を売却。その際に生じた損失を他の所得から控除し、総額約1億円を還付するよう税務署に求めた。土地・建物の売却損の所得控除は、04年4月に施行された改正法により、原則としてできなくなったが、改正法の適用は施行からさかのぼって同年1月からとされたため、税務署は控除を認めなかった。

 訴訟では、遡及適用が、法律に基づかない課税を禁じた憲法に違反するかどうかが争点となったが、判決は「合理的な必要性があれば、遡及適用は憲法に違反しないものとして許される場合もある」と指摘、「適用を翌年からにすると、節税目的で土地や建物が大量に安価で売却されるおそれがあり、合理性はあった」と述べた。

 また、03年12月中旬に新聞で改正が報じられたことを理由に納税者も税制変更を予測できたと判断した。

■週刊税務通信平成20年2月25日号による両判決に対する分析

 同誌は、要約すると次のように分析しております。

・両判決の共通点No.1:租税法規の遡及適用の原則論

 憲法に明文規定が設けられていないものの、むやみに行うことは許されないとする主旨で概ね一致した判断が示されているとしています。

・両判決の共通点No.2:本遡及適用の合理性・必要性

 改正による損益通算目的の駆け込み的不動産販売という弊害を防止するという点で合理性・必要性があるという点で、両判決は一致しているとしています。

・両判決の相違点No.1:事案における遡及適用の有無

 福岡地裁は、改正は遡及適用していると判断しているのに対し、東京地裁は、所得税の納税義務が成立するのは、その暦年の終了の時であり、その時点では、改正法が既に施行されているとして、遡及して適用されたものであるとはいえないとしているとしています。

・両判決の相違点No.2:改正の周知と予測可能性

 福岡地裁は、改正の内容が周知されていたといえる状況にはなかったと判断しているのに対し、東京地裁は、平成16年1月1日以降の土地等又は建物等の譲渡について、損益通算ができなくなることを納税者があらかじめ予測できる可能性がなかったとまではいえないとの判断を示しているとしています。

■事案における遡及適用の有無

 東京地裁の、所得税の納税義務が成立するのは、その暦年の終了の時であり、その時点では、改正法が既に施行されているとして、遡及して適用されたものであるとはいえないというのはかなり無理があるように思えます。

 以前にもこのブログで指摘させていただいておりますが、納税者の予測可能性の保障という観点からは、多くの経済取引において重要な検討要素である税務について、どのような行為や事実から納税義務が生じるかが明らかにされることは、効率的な経済社会の実現に不可欠なことだと思われます。

 納税義務の成立時に改正法は施行されていれば、遡及適用にならないという論理では、どのような行為や事実から納税義務が生じるかが納税義務成立時まで不明となってしまい、効率的な経済社会の実現が阻害されてしまいます。

■改正の周知と予測可能性

 東京地裁の、平成16年1月1日以降の土地等又は建物等の譲渡について、損益通算ができなくなることを納税者があらかじめ予測できる可能性がなかったとまではいえないとの判断は、形式的にはそうかもしれませんが、国民一般を対象とするならば、福岡地裁の、改正の内容が周知されていたといえる状況にはなかったとする判断の方が合理性があるように思われます。

 当ブログの以前の記事でも指摘したとおり、日本経済新聞朝刊などでも、与党(自民党・公明党)の平成16年度税制改正大綱自体は掲載されましたが、譲渡損失の他の所得との損益通算及び繰越控除制度の原則廃止については記事としては言及されていなかったはずであり、かなり情報に敏感な専門家のみが予測しえたというのが正直なところではないでしょうか?

■控訴

 週刊税務通信平成20年2月25日号によると、福岡の事案は、既に国側が控訴し、東京の事案についても納税者が控訴することが予想されており、やはりこの判決が確定したときの内容によっては、税制改正における遡及適用に影響が及ぶことも予想されるとしています。

 影響は重大だと思いますので、今後の動向にますます目が離せなくなってきたといえます。

■他の所得との損益通算及び繰越控除が可能な土地建物等の譲渡損失の特例

 当ブログの以前の記事でも指摘しましたが、所有期間5年超の居住用の土地建物等で、新たな居住用の土地建物等に買い換える一定の場合や、住宅ローンが残っている一定の場合には、現在でも土地建物等の譲渡損失が他の所得との損益通算及び繰越控除が可能ですので十分にご注意ください。

 特に所得税の確定申告の時期ですので再点検をしてみてはいかがでしょうか?

 

 

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