鈴木慶一の親しみやすく洒落たポップ・センスの後継者。シネマ「GOLDEN☆BEST」
昨年12月に26年ぶりに復活して、ファーストと同じく鈴木慶一プロデュースのセカンド・アルバム「Cinema Returns」を発表した松尾清憲率いるシネマ。うーん、これは違うのでは・・・・。
ということで、1981年のファースト・アルバム「モーション・ピクチャー」をどうしても聴きたくなります。2006年6月に発売されたシネマ「GOLDEN☆BEST」に全曲収録された傑作「モーション・ピクチャー」は、色あせるどころか、最新リマスターでますますピカピカに光り輝く永遠の「ウルトラ・ポップ」(帯より)です。
1981年のシネマ「モーション・ピクチャー」は、発売当時大学生だった私に衝撃を与えた1枚です。1979年のダリル・ホール&ジョン・オーツの「モダン・ポップ(X-STATIC)」とともに青春の2大ポップ・アルバムであり、当時組んでいたバンド(POW!にコンテストで負けたバンド)でも曲作り等でかなり影響を受けました。
「モーション・ピクチャー」発売時のライナー・ノーツに寄せたプロデューサーの鈴木慶一のコメントが、「GOLDEN☆BEST」のライナー・ノーツにも使用されていますので、一部引用いたします。
シネマは、正統派ブリティッシュ・ポップだ。真面目に歪んでいる古い映画館のスクリーンだ。シネマの音楽を耳にしてから2年以上たつ。マァなんと「火の玉ボーイ」っぽいサウンドでしょう。ボク等のオフィスに入りなさい、と言ってから2年経過した。その間、わがライダースは、「火の玉ボーイ」的サウンド、シネマ的サウンドから遠ざかる努力をしたのだ。何故なら、ポップ度において彼等は、ムーン・ライダーズを超えていたから。
というわけで、鈴木慶一は、「親しみやすく洒落たポップなセンス」の後継者として、松尾清憲率いるシネマを指名し、同時期に自ら率いるムーンライダーズは「マニア・マニエラ」という「サウンド・メイカーとしての最新の情報をいち早く重層的に織り込むマニアックなセンス」が最も発揮されたアルバムを作成したわけです。
そして、鈴木慶一作曲の斉藤哲夫「いまのキミはピカピカに光って」(1980年)のヒットの余勢をかったプロデューサー鈴木慶一が、ヒット・メイカーに最も近づいた瞬間がシネマ「モーション・ピクチャー」です。
しかし、結果的には、シネマ「モーション・ピクチャー」もセールス的には振るわず、どういう事情だったかはわかりませんがアルバム1枚で解散を余儀なくされたようです(「GOLDEN☆BEST」には、次回作用の未発表曲が収録されています)。
ちなみに、特に私が好きな曲は、「スイッチ・オン」、「愛しのクリスティーン」、「電話・電話・電話」あたりです。「ウルトラ・ポップ」という意味では、シュガー・ベイブ「SONGS」とも通じるものがあります。両者の違いは、シュガー・ベイブ「SONGS」があくまでもアメリカンなのに対し、「モーション・ピクチャー」は、松尾清憲自身がライナー・ノーツで語っているように10CCやスパークスやデフ・スクールといった70年代の英国モダン・ポップの影響が醸し出す独特の味わいがある点でしょう。
音楽産業不況の中での再発企画、シネマ「GOLDEN☆BEST」ですが、ソニー・ミュージック・ダイレクトのグッド・ジョブです。
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