メロディ・メイカーとしての親しみやすく洒落たポップなセンス。鈴木慶一「CM WORKS ON・アソシエイツ・イヤーズ(1977-1989) 」
新作「ヘイト船長とラヴ航海士」に対する記事で、鈴木慶一の魅力として、「メロディ・メイカーとしての親しみやすくわかりやすいポップなセンス」を指摘させていただき、MYB氏もコメントで「天性のポピュラリティ」と評した鈴木慶一。
ところが、そのような才能の持ち主なのに、結局、鈴木慶一自ら歌ったヒット曲はいまだになく、その才能を信じた業界人やファンを次々と裏切り翻弄してきた(?)原因は何でしょうか?
昨年12月に発売の鈴木慶一「CM WORKS ON・アソシエイツ・イヤーズ(1977-1989) 」を聴きながら考えてみます。
2006年12月に、ムーンライダーズのメンバーが手掛けたCM音楽集「MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006」が既に公表されていましたが、今回の「CM WORKS ON・アソシエイツ・イヤーズ(1977-1989) 」は、鈴木慶一がCM音楽会社ON・アソシエイツ音楽出版で制作した作品に絞って時系列に並べたアルバムです。
「MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006」も素晴らしかったですが、「CM WORKS ON・アソシエイツ・イヤーズ(1977-1989) 」は、鈴木慶一のポップ・センスがさらに凝縮され、これこそ鈴木慶一の最高のソロアルバムではないかと思わずポンと手を打ってしまう出来です。
このアルバムを聴いて、前回の記事で鈴木慶一の魅力として指摘させていただいた「メロディ・メイカーとしての親しみやすくわかりやすいポップなセンス」ですが、「メロディ・メイカーとしての親しみやすく洒落たポップなセンス」に訂正させていただきたいと思います。
つまり、鈴木慶一のポップ・センスは洒落ているから音楽通を魅了するのであり、洒落ていることは万人へのわかりやすさと相反するとともに、それがセールスへの障害になるのではないでしょうか?
そこが、鈴木慶一と桑田圭祐の違いといってもいいかも知れません(かつて、ピーター・バラカン氏は、ミュージック・マガジンのクロス・レビューで、自分は外人だからムーン・ライダーズとサザン・オール・スターズは同じに聞こえるというようなことを言っていましたが)。
これぞ、鈴木慶一ポップといべきナビスコ「ピコラ」から始まり、ボズ・スキャッグスの影響にニヤリとさせられる丸井ファッション「バイバイボーイ・バイバイガール」、原型なのか使いまわしかわからないけどこれはパンタ「オートバイ」の東レ「シルックきもの」、当然のミノルタX-7「いまのキミはピカピカに光って」、これも原型なのか使いまわしかわからないスカーレットの誓いの浜松西武「宝さがしと夢さがし」、リアルタイムで聴いた時もこっちがカッコよかった「BLDG」の日産スタンザ「家物語」とお宝満載です。
ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ「フル・サークル」もそうでしたが、「MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006」と「CM WORKS ON・アソシエイツ・イヤーズ(1977-1989) 」での濱田高志氏の緻密かつ愛情あふれる仕事振りに、心よりリスペクトしたいと思います。
ところで、1982年のミノルタのCMで、鈴木慶一が「僕はスーパーフライ」をバックに斉藤慶子をカメラで追いかけるというのがありましたが、あれはCMタイアップでCM音楽ではないので収録されていないということになるのでしょうか?
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コメント
巷には、マニアックかわかりやすいかなどという以前の凡庸さ退屈さにもかかわらず売れている曲やアーティストはずいぶん存在します。 売れてる曲=いい曲とは限らないし、いい曲書けばヒットするという保証はない。
考えてみると、それこそ桑田(サザン)くらいに売れるには、音楽的な資質とは別の要素も大きいんじゃないでしょうか。大規模な戦略とか、音楽性以外の魅力とか、時流とか、芸能的なスタンスやスター扱いに対する当人の覚悟とか……。鈴木慶一は、ライダーズは、どうでしょう。
回顧インタビューで「ビジネスチャンスだったかも」という話がいくつかあったことが語られていますが、仮に「売る」ほうに話が転んでいたとしても、彼(ら)の東京shynessのために中途半端な結果に終わったのではという気がします。
ところで、もし、ライダーズがサザンやミスチル並みに売れていたら、あるいは鈴木慶一が往時のTK並みの存在になっていたら、そのうえけっこう通ウケもするいい曲書いてたりしようものなら、マニアの胸中いかばかりでしょうか。(あまりに現実味がなくて想像する気も失せますが。)
投稿: MYB | 2008年2月26日 (火) 03時36分