私的なS-KENの最高傑作。エスケン&ホット・ボンボンズ「パープービー」
「パープービー」は、当時大流行したサイバーパンクの影響を受けたアルバムです。
サイバーパンクとは、1986年のウィリアム・ギブソンの小説「ニューロマンサー」を契機に大流行したSFのサブジャンルです。ニューロマンサーでは、サイバースペースと呼ばれるネットワーク空間(仮想空間、仮想社会)で人体とコンピューターが結合したような物語が繰り広げられ、千葉市がサイバーシティ・チャイバとしてクールなものとして評価され舞台となっていた点でも日本では話題になりました。若い方には、映画「マトリックス」のような世界と言えばわかりやすいでしょう。
確かパール兄弟のサエキけんぞうも同じようなことを言っていましたが、私は「ニューロマンサー」はどうにも読みにくくて途中で挫折してしまいました。しかし、映画「ブレードランナー」(1982年)の雑然とした近未来感覚が大好きだったこともあり、「パープービー」の世界は当時の気分にズバリはまっていた感じです。
文化デリック(川勝正幸氏と下井草秀氏のユニット)によるS-KENへのインタビューによると、S-KENは、細野晴臣のトロピカル・ダンディ路線との違いは、パンク・ニューウェーヴを通過したことによるパンキーさだとし、そのパンキーさは前作「ジャングル・ダ」では現われてなく、「パープービー」から現われていると自ら指摘しています。
確かに細野晴臣のトロピカル・ダンディ路線は、パンク・ニューウェーヴより前の時代のものだったし、その後の細野晴臣もパンク・ニューウェーヴというよりテクノ・ポップを通過した人という印象があり、パンキーさというのがS-KENの資質にあっていたと思います。もっとも、S-KENは今の年齢でやったらもっとレイド・バックした感じになるだろうと言っていますが。
前後のアルバムも素晴らしいのですが、パンキー・ルーツ・ミュージックともいうべき実にオリジナリティあふれるサウンドの「パープービー」がS-KENの最高傑作と私は思います。
「パープービー」では、ドラムの小田原豊がレベッカが忙しくなったため抜け、替りにパール兄弟の松永俊弥が加入し、全体のサウンドはCo-Produceのギターの窪田晴男の磁力が強い感じがします。
1987年の発売当時、私はCDで購入しているため紙ジャケはピンと来ませんが、デジタルリマスタリングにより明らかに音が向上していますので、CDを既にお持ちの方も購入を検討されてはいかがでしょうか?
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コメント
「パープービー」では「32階の窓から」と「よろめきながら地下鉄へ」が好きです。2曲とも「ジャングル・ダ」以前からのハードボイルド路線ですが、太く重心の低い演奏がかっこいい。
「ジャングル・ダ」以外の紙ジャケ版購入は保留していますが、買い直そうかなって気になってきました。
S-kenの世界はサイバーパンクというよりブレードランナーといったほうがしっくりきますよね。当時サイバーパンクって流行しましたけど、今思えば、つくづく雰囲気だけだった気が。PC普及の10年前に、私も含めてほとんどの日本人がサイバーパンクを咀嚼できていたとはとても思えません。
ブレードランナーといえば、年末に出たDVDのCOLLECTOR'S EDITION(FINAL CUTのほか過去3ヴァージョンをすべて収録)はチェックされましたか。デジタル処理でグレードアップした画質が素晴らしいです。
投稿: MYB | 2008年1月23日 (水) 03時29分
MYBさん、コメントありがとうございます。
COLLECTOR'S EDITION、DVD5枚組税込18,812円のことですか・・・。「デジタル処理でグレードアップした画質が素晴らしいです。」とは罪な言葉です。
CDのデジタルリマスタリング再発で手いっぱいで気が付きませんでしたが、映画DVDもデジタル処理化が進んでいるわけですね。
ブレード・ランナーだけは、検討してみたい気がいたしますが。
投稿: Accounting&Music | 2008年1月24日 (木) 00時18分