ディランを唄うことによって己を唄う。和久井光司「ディランを唄う」
ミュージック・マガジン2007年11月号に「細野晴臣が選んだ50曲の”ルーツ・オブ・ハリー細野”」(取材・構成=北中正和)という素晴らしい記事が載っていました。
その中で細野晴臣は、「高校のときアメリカに行った友だちがディランの『フリーホイーリン』をおみやげに買ってきてくれたけど、そのときはまだわからなかった。『サブタレニアン・ホームシック・ブルース』はロックだから、なんだかわかんないけど好きだった。ディランがほんとに好きになったのは『ブロンド・オン・ブロンド』を聞いてからだった。うるさいだけの音楽じゃないなと、深みを感じた。(途中省略)ディランは名作曲家だと思う。誰もそう思わないかもしれないけど。」と語っています。
それを読んでみて、細野晴臣でもボブ・ディランがはじめはわからなかったこと、「ブロンド・オン・ブロンド」はそんなにいいアルバムなのかということが印象に残りました。そこで、今まで、「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」のビデオ・クリップは本当にカッコいいと思っていたものの、基本的にディラン音痴の私でしたが、「ブロンド・オン・ブロンド」を聞いてみたところ、ルーツ・ミュージック的深みのあるサウンドが実に気持ち良く、ディランに興味を持ち始めた矢先に、このカヴァー集が発売になりました。
このカヴァー集を聴いて思うのは、まず細野晴臣の指摘するディランの曲のメロディーの良さです。ディランが歌うとよくわかりにくいのですが(どうもわざとわかりにくくしているようなのですが)、予想外に「濃い」メロディーがくっきりと浮かび上がっています。曲によってはディランのものよりもこちらの方が良いと思えるものもあり、メロディーの良さを浮かび上がらせたことについては、和久井光司の功績ともいえるでしょう。
次に、和久井光司のパワフルな企画力です。ソニーのボブ・ディランの偉大なる功績を次世代に伝えるための「DYLAN ICONプロジェクト」に合わせ、人気漫画家浦沢直樹との対談本「ディランを語ろう」をほぼ同時に発売するとともに浦沢直樹によるジャケットを採用、ボブ・ディランの日本への紹介で知られる中村とうよう氏による解説、浦沢直樹以外にもPANTAやあがた森魚や小室等や中山ラビやモーガン・フィッシャー他の多彩なゲスト、そして極めつけは日本語詞を英訳してボブ・ディラン本人から得た「公認」です。これらの演出は、間違いなく本作をより楽しいものにしています。
ところで、個人的にうれしいのは、「ブラインド・ウィリー・マクテル」でのDAIMYO!(1st guitar solo)のクレジットと元気そうなDAIMYO!の写真です。DAIMYO!は、元レベツカの小田原豊(Ds)、現在プロデュサーとしても有名な根岸孝旨(B)とともにPOW!というグループを昔やっていて、私が大学生の頃にあるコンテストの決勝で一緒になり、彼らが準グランプリ(小田原豊が個人賞)になったので賞金で一杯おごってもらった思い出があります。他の2人の活躍は目についていましたが、DAIMYO!も音楽活動を着実に続けているようで何よりです。
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