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すっきりらくらく安心な資産運用について考えるNo.3。世界経済は成長する。橘玲「臆病者のための株入門」

H200123  私が今まで読んだ資産運用に関する本で、最も面白いと思ったのが、「海外投資を楽しむ会(AIC)」創設メンバーとしても知られる作家橘玲氏の「臆病者のための株入門」です。最近流行りの「世界市場ポートフォリオ運用」に先鞭をつけたのは、おそらく橘玲氏の「臆病者のための株入門」ではないでしょうか?

 また、シニカルでウイットとユーモアのあふれる橘玲氏の「臆病者のための株入門」は、実用本としてでなくエンタテインメントとしても一級品です。株とかお金の話はちょっとという音楽好きのあなたにもぜひおすすめいたします。

 橘玲氏は、世界一簡単なファイナンス理論早わかりと称して、マーコウィッツ、トービン、ウィリアム・シャープのファイナンス理論を鮮やかに手短に解説します。そして、「経済学的にもっとも正しい投資法」は以下の引用のとおりとします。

 株式市場を数学的に解析するファイナンス理論の根幹は、マーコウィッツが最初に設定した「株価はブラウン運動のようにランダムに動く」という仮説である。このような市場では株価の変動は確率的にしか予測できないのだから、株式投資は偶然のゲームになり、市場参加者はだれひとり有利な立場を手にすることはできない。これが「効率的市場仮説」で、その場合、合理的なすべての投資家は同一の情報、同一の基準、同一の判断に基づいて同一のポートフォリオを保有するはずだ。同じ一本道を歩けばだれもが同じ場所のたどりつくように、この世に効率的なポートフォリオはたったひとつしかないのだ。

 この前提が正しければ、以下の単純な三段論法が成立するとシャープは指摘した。

(1)すべての投資家が持つポートフォリオを合計すると、市場に存在するすべての株式の時価総額になる(投資家以外に株式を保有するひとがいないのだから、これは当たり前だ)。

(2)すべての合理的な投資家は、効率的市場では、同一のポートフォリオを保有している。

(3)となると、投資家が保有するもっとも効率的まポートフォリオは、市場に存在する割合だけ保有したものになる。

 まるで一休さんのトンチ話のようなこの三段論法によって、シャープは、株式市場そのものが唯一絶対の効率的ポートフォリオであると結論づけたのである。

 とはいえ、いったいどうすれば「市場そのものに投資する」なんてことができるのであろう。

 安心してほしい。じつはこれはものすごく簡単である。

 TOPIXのような平均株価に連動して値動きするファンドをインデックスファンドという。これは、株式市場に存在するすべての銘柄を時価総額に応じて保有するもので、まさに市場を縮小コピーしたものだ。

 こうした紆余曲折を経て、数多くのノーベル賞学者を輩出したファイナンス理論の頂点に君臨する「経済学的にもっとも正しい投資法」が完成した。それはサンダルをつっかけて近所の証券会社に出かけ、「すみません。インデックスファンド10万円分ください」と注文することなのである。

 さらに、橘玲氏は、ファイナンス理論の根幹にある前提は、資本主義は自己増殖するシステムであり全体として市場が拡大していくという予測であり、「経済学的にもっとも正しい投資法」とは、世界市場全体に投資する「世界市場ポートフォリオ」(橘玲氏の命名)であるとします。

 運用資産の構成割合の決定において外国よりも自国の金融商品を重視することホームバイアスといいます。橘玲氏の画期的なところは、このホームバイアスを度外視してしまったことで、橘玲氏自身も「アメリカの資産運用理論を金科玉条のごとく押しいだく”専門家”たちのなかにも、こんなカゲキな主張をするひとはだれもいない」と認めています。

 最近は、橘玲氏の「世界市場ポートフォリオ」の影響かわかりませんが、梅屋敷商店街のランダムウォーカー氏などホームバイアスを重視しない個人投資家の方が増えてきているように思いますし、マネックス証券社長の松本大氏も2007年1月7日の日本経済新聞で国ごとの国内総生産(GDP)の比率を目安とした株式投資の資産配分を提案されていました(オルタナティヴ投資を15%組み込む点で「世界市場ポートフォリオ」と相違していましたが)。

 ホームバイアスを重視しないことが適切かどうかは難しい問題ですが(例えば、アメリカでの話ではありますが、バンガード・グループ創始者J・C・ボーグルの「インデックス・ファンドの時代」東洋経済にはアメリカの資本市場が世界中で最も完璧であることなどを理由にグローバル・ポートフォリオに否定的な記述があります)、少なくとも国ごとの国内総生産(GDP)の比率を目安とした「世界市場ポートフォリオ」は大変わかりやすい資産配分の手法であることは間違いないのではないでしょうか?

 次回は、「世界市場ポートフォリオ」の具体的な運用方法とについて考えてみたいと思います。

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