パブリックコメントと税法。逓増定期保険の税務上の取扱いの一部改正案、パブリックコメント手続中No.3。
パブリックコメントとは、Wikipediaによれば、「公的な機関が規則あるいは命令などの類のものを制定しようとするときに、広く公に(=パブリック)に、意見・情報・改善案など(=コメント)を求める手続」で、「公的な機関が規則などを定める前に、その影響が及ぶ対象者などの意見を事前に聴取し、その結果を反映させることによって、よりよい行政を目指すもの」です。
従来、会計基準などでは一般的でしたが、今回の「逓増定期保険の税務上の取扱いの一部改正案」でも採用されており、これからは税法でもパブリッコクコメント手続きが一般化するのでしょうか?週刊税務通信の報道を追いながら考えてみます。
■平成18年9月5日開始の財産評価基本通達の一部改正のパブリックコメント手続き
私の知る限りでは(間違っていたら申し訳ありません)、税法関連で最初にパブリックコメント手続き(通称「パブコメ」)を目にしたのは、平成18年9月の財産評価基本通達の一部改正です。
週刊税務通信・平成18年9月18日号によれば、このパブコメは、平成17年6月の行政手続法の改正によって新設された「意見公募手続」の規定に従ったものだそうで、改正行政手続法では,行政機関が政令,省令,審査基準,行政指導指針などの「命令等」(行政手続法2八)を制定するに当たっては,事前にその案を示して広く意見や情報を募集しなければならないとしているそうです(行政手続法39①)。
そうすると、各税法の解釈通達や政省令も行政手続法に基づいて改正前にパブコメにかけられるのかというと、行政手続法は、「納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となるその金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他その法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき」(行政手続法39④二)など、「特別な事情がある場合」に意見募集手続に適用除外を設けているため、税制改正等に伴って改正等される解釈通達や政省令は行政手続法上はパブコメを行う必要がないと解するそうです。
平成18年9月5日開始の財産評価基本通達の一部改正のパブコメは、直接税制改正を受けたものではなく、意見公募手続を必要としない「軽微な変更」(行政手続法39④八)にも該当しないため、パブコメ手続きとなったようです。
■その他の税法関連のパブリックコメント手続きの論拠
平成18年9月11日開始の「所得税確定申告の手引き(案)」のパブコメは、行政手続法に基づく手続ではなく「任意の意見募集」に該当するそうです(週刊税務通信・平成18年9月18日号)。
平成19年5月14日開始の平成19年最高裁判決による小規模宅地特例の取扱い変更の通達改正案のパブコメは、判決を受けて命令等を定めるので行政手続法上のパブコメの適用除外でないためだそうです(週刊税務通信・平成18年9月18日号)。
その他、平成19年4月13日開始の移転価格事務運営要領(事務運営指針)等の一部改正案のパブコメ、平成19年4月27日開始の退職所得に認められる執行役員の一時金についての所得税基本通達の一部改正案のパブコメも、行政手続法上のパブコメの適用除外にならないためのようです。
■今回の逓増定期保険の取扱いの一部改正案のパブリックコメント手続きの論拠
税務通信・平成20年1月14日号は、今回のパブコメについて、「これは、かねてから行き過ぎた節税とされていたものを規制するのが内容で、パブコメ結果を受けた改正通達で示された日以後の契約から規制策を適用する模様だ。パブコメは取扱い変更の不利益をなくすものとされているが、今後は節税規制発動の際の手順となるものとしても注目されよう。」と指摘しています。
■今後の実務への影響
まず、今後はますます税法関連のパブコメは増えて行きそうです。流れを見ていると、行政手続法のパブコメの適用除外にならないものは極力パブコメにかけようという国税庁の姿勢が感じられますし、「所得税確定申告の手引き(案)」といったものまでパブコメにかけているからです(そのおかげかよくできていました)。
次に、今後の節税規制発動の際の手順としてパブコメが定着するならば、納税者の予測可能性の保障という点で大変好ましいことだと思います。多くの経済取引において重要な検討要素である税務について、どのような行為や事実から納税義務が生じるかが明らかにされることは、効率的な経済社会の実現に不可欠なことではないでしょうか?
海外親会社からのストックオプションを、国税関係者の執筆した書籍に基づき一時所得としたところ、その後取り扱いが変わり給与所得であるとして更正処分をされ、争いとなったいわゆるストックオプション訴訟のようなことは今後ないようにしたいものです。
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