適用時期と既契約への影響。逓増定期保険の税務上の取扱いの一部改正案、パブリックコメント手続中No.2。
一昨日にご紹介した、平成19年12月に国税庁公表のパブリックコメント手続き中(平成20年1月31日意見募集締切)の逓増定期保険の税務上の取り扱いの一部改正案について続けてお話しさせていただきます。適用時期はいつからで既契約の取り扱いはどうなりそうなのでしょうか?
■従来の例①:平成13年のがん保険等(終身保障タイプ)の税務上の取り扱いの改正
終身保障タイプのがん保険及び医療保険の保険料について、改正前は既存の個別通達により支払時の損金処理が認められていましたが、保険料を短期払い契約とすることにより課税所得の繰延による課税上の弊害が生じました。そこで、新たな個別通達(平成13年8月10日付、課審4-100)により、終身払込の場合は従来通りながら、有期払込の場合は一定額の保険料の前払部分は払込時にいったん資産計上し、払込満了後に一定額を取り崩して損金算入していくよう改正されました。
この改正では、新通達は平成13年9月1日以降に保険料の支払期日が到来するものから適用されるとされ、、既契約分でも支払期日が平成13年9月1日以降となる保険料については適用対象となりました。
■従来の例②:平成18年の長期傷害保険(終身保障タイプ)の税務上の取扱いの明確化
それまでは、上記の終身保障タイプのがん保険及び医療保険の個別通達の考え方、あるいは傷害保険特約の損金算入についての法人税基本通達9-3-6の2を準用して、長期傷害保険(終身保障タイプ)の終身払込についても全額損金処理が可能だとされ節税商品として販売がなされていました。ところが、平成18年4月28日付の国税庁から社団法人生命保険協会への回答という形で、長期傷害保険(終身保障タイプ)については有期払込だけでなく終身払込も含めて、一定の支払保険料について資産計上が求められることが明確化されました。
上記については、改正ではなく、あくまでも税務上の取り扱いの明確化であり、適用日も既契約への影響についても言及がなく、既契約の税務処理をどうするかについて実務上は混乱が生じたようです。つまり、「そもそもそう解釈すべきであった」ということのようですが、そう言われても契約者である企業は予測不能で困惑してしまうのではないでしょうか。
■今回の逓増定期保険の税務上の取り扱いの一部改正案
今回の逓増定期保険についても、平成19年3月の通達の改正予定のアナウンスを受けて、平成13年のがん保険等(終身保障タイプ)の税務上の取り扱いの改正のように既契約でも適用日以降の支払保険料も影響があるのか、さらにまさかありえないでしょうが平成18年の長期傷害保険(終身保障タイプ)の税務上の取扱いの明確化のようにそもそも解釈が相違していたということになるのか注目が集まっておりました。
今のところの結果を申し上げると、「改正後の取扱いは、平成20年 月 日以後の契約に係る逓増定期保険の保険料について適用し、同日前の契約に係る逓増定期保険の保険料については、なお従前の例による。」とされています。
すなわち、パブコメ手続き中ではありますが、適用日は改正案では空欄になっており未定のものの、適用日前の契約については従来どおりの取り扱いのままでよく、適用日以後の契約から新しい取り扱いとなることになりそうです。
■実務への影響
契約日を基準に適用されることによって、納税者の予測可能性が確保された点は大いに評価できるのではないでしょうか。
しかし、いつ契約したかによって税務処理が相違することになり、契約者である企業の税務処理、そしてわれわれ税理士の税務判断については、ただでさえ複雑な保険税務だったのになおさら複雑となり、誤るリスクと手続きコストが高まってしまいました。
私が知る限りでは、大同生命が法人の決算日にあわせて毎事業年度の税務処理を例ではなくその法人の具体的数値で通知してきているようですが(全商品かはわかりませんが)、契約者保護の観点から同様なサービスが各保険会社に広がってゆくことを希望します。
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