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約50年に渡る「ベンチャー・スピリット」に心打たれ、歯切れのよい歌の心地よさに酔う。ボブ・ディラン「DYLAN」

H200114  ボブ・ディランの今までのオリジナル・アルバムから年代順に1~2曲づつを選んだ3枚組ボックス・セットが昨年10月に発売になりました。ボブ・ディランの約50年に渡る「ベンチャー・スピリット」に触れるならこのボックス・セットが一番でないでしょうか?完全生産限定盤ですので在庫のある今がチャンスです。

 本作のライナー・ノーツの冒頭でアメリカの音楽ライターのビル・フラナガン氏は次のように語っています。

 「ボブ・ディランは50年近くのあいだアーティストでありつづけている。これはたいへんなことだ。さらにすごいことに、その50年のほとんどの期間、活発な活動を続け、その作品はつねに人々の話題になってきた。ディランというアーティストが、過ぎ去りし昔への感傷、あるいはノスタルジーとしてとらえられることはなかった。ディランもまた、過去の成功とおなじパターンの成功をくりかえそうとはしなかった。結果はどうであれ、つねに前向きの仕事をしてきた。」

 また、和久井光司「ディランを唄う」のライナー・ノーツによると、ロビン・ヒッチコクやREMのピーター・バックやロン・セクスミスなどの海外ミュージシャンから和久井光司は「ディランは歌詞じゃない。スタイルじゃない。表現にむかっていく気持ちなんだ」と言われたそうです。

 ボブ・ディランの「結果はどうであれ、つねに前向きの仕事をしてきた」という「ベンチャー・スピリット」がいかに徹底していたかは、ここで語ることには無理があり浦沢直樹×和久井光司「ディランを語ろう」(浦沢直樹の漫画「BOB DYLANの冒険」がわかりやすい)などのディラン本を読む必要があるかと思います。ディラン本を片手に、今までのオリジナル・アルバムから年代順に1~2曲づつを選んだ本作を聞くと、その「ベンチャー・スピリット」の凄さに心打たれます。本作は、1枚組の仕様もあるのですが、その意味からは間違いなく3枚組を選ぶ必要があるでしょう。

 ちなみに、私は最近、ボブ・ディランにはまっていますが、私にとってのボブ・ディランの音楽的な魅力は歯切れのよい歌の心地よさです。こんなことを言ったらどちらのファンからも怒られそうですが、何を歌っているのかよくわからないけど歯切れのよい歌が心地が良いという点で、佐野元春と同じ心地よさを感じます。

 特に、本作は全曲2007年最新リマスターですごく音がよく、歯切れのよい歌の心地よさに磨きがかかっています。リマスタリングをしているのは、マーク・ワイルダー(MARK WILDER)という人で、マイルス・デイビスなどのリマスタリングをしているようで、道理で音が良いわけです。

 ただし、AMAZONのカスタマー・レビューで「ボックスに収納できるように日本盤ブックレットを小さくしてよ」とレコード会社に苦言を呈している方がいますが、正に同感です。せっかく美しく仕上がったボックスに、なぜか日本盤ブックレットが入らない大きさで作られており、私も置き場に苦慮しています(菅野ヘッケル氏訳のビル・フラナガン氏の解説は日本語で読みたいところです)。

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