ファンド関係者はご注意。匿名組合配当(利益の分配)は所得税の源泉徴収が今月から出資者が10人未満でも必要に。
匿名組合契約等に基づく匿名組合配当(利益の分配)については、従来は出資者が10人未満の場合は20%の所得税の源泉徴収が不要とされていました(非居住者や外国法人に対するものについては出資者の人数にかかわらず必要)。
平成19年度の税制改正で、ライブドア事件等に端を発するファンド課税強化のため、平成20年1月1日以後に支払われる匿名組合契約等に基づく匿名組合配当(利益の分配)については出資者の人数にかかわらず20%の所得税の源泉徴収が義務付けられました。
改正案の公表から約1年経ってから適用になるので忘れている方も多いかと思われる匿名組合配当金の源泉税のこの改正、侮ると痛い目に会いますので、不動産証券化等ファンド関係者はご注意ください。
■今回の改正の対象となる利益の分配
商法535条の匿名組合契約及びこれに準じた契約に基づく利益の分配です。国内の任意組合員、投資事業有限責任組合員、有限責任事業組合員に対する分配金は従来通り源泉徴収の対象とはされていません(非居住者や外国法人に対するものは除く)。
■源泉徴収義務
平成20年1月1日以後に、居住者及び内国法人に対して匿名組合契約及びこれに準じた契約に基づく利益の分配につき支払いをする者は、出資者の人数にかかわらず、その支払の際に利益の分配につき20%の税率で所得税の源泉徴収を行い、その徴収の日の属する月の翌月10日までに納付しなければなりません。
■納期の特例及び納期限の特例の適用不可
給与等や税理士等の報酬につき年2回にまとめて、源泉所得税を納付する納期の特例等を受けている場合でも、匿名組合契約等に基づく利益の分配の源泉所得税は対象にならず、その徴収の日の属する月の翌月10日までに納付しなければならない点にご注意ください。
■使用する納付書
「配当等の所得税徴収高計算書(納付書)」ではなく、「利子等の所得税徴収高計算書(納付書)」を使用しますのでご注意ください。
■納付を忘れた場合
翌月10日までに納付しなかった場合に、原則として納付すべき金額の10%の不納付加算税を徴収されます。ただし、正当な理由がある場合や法定納期限内に納付する意思があったと認められる一定の場合で法定納期限から1ヶ月以内に納付されたときの不適用措置、納税の告知がされることを予知しないで法定期限後の納付した場合の5%への軽減措置の救済策が設けられてはいます。
■支払調書の作成と法定調書合計表の提出義務
平成20年1月1日以後に、居住者及び内国法人に対して匿名組合契約及びこれに準じた契約に基づく利益の分配につき支払いをする者は、出資者の人数にかかわらず、その支払の日の属する年の翌年1月31日までに、支払金額が年5万円以下のものを除き、支払調書を所轄の税務署長に提出しなければなりません。
■実務への影響No.1:納付漏れによる不納付加算税のリスク
例えば、平成20年1月31日に5,000万円の匿名組合分配金を支払い、5,000万円×20%=1,000万円の所得税の源泉徴収と2月12日の法定納期限内の納付を忘れ、仮に不納付加算税の不適用措置や軽減措置が受けられないと仮定すると、1,000万円×10%=100万円の不納付加算税が課されるおそれがあります。匿名組合分配金の金額によっては不納付加算税の金額もかさみますので注意が必要です。
不納付加算税の怖いことろは、延滞税のような日割計算と異なり、1日でも納付が遅れたら納付すべき金額×税率がストレートに徴収されてしまうおそれがある点です。
多数の年4回の匿名組合決算のSPCを管理しているようなケースですと、源泉所得税の納付の管理も一苦労ではないでしょうか?
■実務への影響No.2:出資者への影響
源泉徴収された所得税は、出資者の法人税又は所得税から控除あるいは控除しきれないときは還付を受けられますので、全期間を通算すると税額に差異は生じません。しかしながら、源泉徴収税額相当額を前払いせざるをえないことになりますので、出資者の資金計画上で考慮せざるを得ないとともに、時間価値を考慮したキャッシュ・ベースのパフォーマンスには悪影響を与えざるをえないことになるかと思われます。
税理士としての経験から申し上げると、毎月10日や毎年7月と1月の納期の特例の給与源泉所得税等は規則的であるため比較的忘れないのですが、株式の配当が従来そうでしたが、あるかないかわからない規則性が乏しい源泉所得税の源泉徴収と納付は忘れやすいのでくれぐれもご注意ください。
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